シルクロードに比べると、ソルトロードは地味な存在である。しかし、より生活的なもので、より必然的なものであり、絹の道は洋の東西を結ぶロマンの道とするなら、塩の道は海と山を結ぶ、切っても切れぬ血潮の道である。
塩の道には旅の安全と道の行方を刻字した石碑(ぶみ)が、必ずといってよいほど追い分に立てられている。大抵は庚申塔と道標の兼ねたものであり、その施主は牛方馬方、旅にかかわりのある人たちのけなげな道徳観に支えられた厳粛な渡世の知恵であった。
末尾の道標は、盛岡から遙かに野田を指さして、野田塩ベコの道を教えている。そして人なる母の水、すなわち塩を呼んでいるのである。